忍者ブログ

ゴルゴ40の高校演劇用脚本置き場

高校演劇用の脚本置き場

2024.04│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

サイト移転統合のお知らせ

 当サイトは私のメインサイト「ゴルゴ40の、ただの日記じゃねえか、こんなもん」に移転統合しました。

 そちらにお越しください。
PR

夕陽のあたる教室ver.2

シェアブログ1に投稿

「夕陽のあたる教室ver.2」中島清志 作  (上演時間60分)    

【登場人物】♀1人 ♀ 鈴木美奈・・・高校3年生・アニメ部(らしい)・母子家庭(らしい)

☆高校を中退することになった美奈は、夏休み野球の応援で誰もいない学校に、自分の荷物を取りに来ますが・・・ver.2は、より切なく悲しいラストです。1人芝居で表現出来る限界に挑戦したつもり。

ダウンロード(pdf)はこちら

ラストクリスマスver.2

「ラストクリスマスver.2」 ゴルゴ40作 (上演時間55分)

【登場人物】♂椎野冬樹(しいの・ふゆき)・・・高校3年生。演劇部員。
      ♀星崎未唯(ほしざき・みゆ)・・・高校3年生。演劇部員。
      ♀岬詩子 (みさき・しいこ)・・・高校2年生。演劇部員。
      ♀吉田葉月(よしだ・はづき)・・・高校1年生。演劇部員。

☆小学校からの幼なじみで、高校でも一緒に演劇部員だった冬樹と未唯。お互いにひかれながら一線が越えられないでいる。高三最後のクリスマスイブ。部室でパーティーを、という事でやって来た2人は・・・

 2006年度呉地区高校演劇大会で創作脚本賞を受賞。 

ダウンロード(pdf)はこちら

いかがでしょうか?もし良かったら押してください。
         ↓
人気blogランキングへ

春、それぞれの・・・

 春、それぞれの・・・(上演時間45分)  

【登場人物】♀ ハラダユキ (高校3年生)
      ♀ ツルタサナエ(高校3年生)
      ♀ ナガイトモミ(高校3年生)
      ♀ イトウマサコ(下宿屋の女主人:通称オバチャン)

☆島の女子高生を下宿させてもう40年のイトウマサコ。橋が通って下宿生がいなくなり、今日は最後の3年生とのお別れパーティー。しかし全員卒業するわけではありませんでした。

ダウンロード(pdf)はこちら

いかがでしょうか?もし良かったら押してください。
         ↓

人気blogランキングへ

砂の城~彼女が僕に勇気をくれた

 砂の城~彼女が僕に勇気をくれた    

〔キャスト〕♂1人 ♀3人

♂ 谷口勇気・・・高校3年生

♀ 谷口勇気・・・小学生

♀ 母・・・・・・勇気♀の母

♀ 女・・・・・・魔女

     海の音。 
   開幕。  
     基本的に何もないゴミの散乱した秋の海岸である。
     上手と下手に1つずつ人1人腰掛けられる程度の小岩。
     中央には大きなダンボ-ル箱のゴミがある。
     上手から男子高校生がトボトボ歩いて来る。
     谷口勇気である。
     小岩に座って

勇気♂「あ-あ、とうとうこんな所に来ちまったか。」

     海の音。
     勇気♂時間を確かめて

勇気♂「そろそろ7時間目が始まる頃か。土曜が休みになっても7時間授業やられたんじゃ意味不明だよ。受験生は早退したくもなるよなあ。」

海の音。
     勇気♂あたりを見回すと腰を上げ

勇気♂「うわ、濡れちゃったよ、くそう。」

     勇気♂辺りのゴミを見ながら

勇気♂「それにしてもゴミだらけだ。
    海水浴客のマナ-が悪いんだよな。
    こんなダンボ-ルなんか海辺に捨てるか、普通・・・
    うわ、何か鼻がムズムズして来た。」

     勇気がクシャミをすると、箱の中から正体不明の恰好をした、年齢不詳の女が現れる。
     勇気♂少し驚く。

  女「呼ばれて、飛び出て、ジャジャジャジャ-ン!」

勇気♂「あ、あの・・・」

  女「あ-らごめんなさい。
    ビックリして腰を抜かさないでね。」

勇気♂「そんなにビックリしちゃいませんよ。
    どこ見てるんですか。」

  女「ハクション大魔王じゃないわよ。」

勇気♂「そんな事言ってません。」

  女「アクビだったら良かったのに。」

勇気♂「アクビ?」

  女「そう。
    そしたらアクビ娘という事で。」

勇気♂「何言ってんだかわかりません。」

  女「さすがに古かったか・・・
    あの、ちょっといいかなあ。」

勇気♂「僕、宗教には興味ありません。」

  女「ジョウレイって言うんですけど、あなたの血がキレイになるように、少しお祈りを・・・
    って、ちが-う!」

勇気♂「オウム真理教の新しい衣装かと思いましたよ。」

  女「ああ、あれ。
    オウムシスタ-ズとか、けっこうかわいい女の子が宣伝してましたよね・・・
    だから、違うんですってば!」

勇気♂「じゃあ一体何なんですか。」

  女「箱から出て来たのよ。
    呼ばれて、飛び出て、ジャジャジャジャ-ンって。」

勇気♂「ああ、あのゴミ。
    隠れてるのも大変だったでしょう。」

  女「そうよ。
    暑いし、臭いし、虫はいっぱいいるし、ってそんな事はどうでもいいの。
    この衣装を見て、ピ-ンと来ない?」

勇気♂「(首をかしげているが)ああ、わかりました・・・
    女子プロレスラ-。」

     照明が変わり音楽が流れる。

勇気♂「赤コ-ナ-。
    二百六十五パウンド、ダンプま-つもと-。」

     女、合わせてポ-ズを取っているが

  女「ちっが-う!」

勇気♂「誰もいない海岸で、秘密の特訓中とか・・・」

  女「どうせならキュ-ティ-鈴木に・・・
    じゃなくて、違うの!」

勇気♂「凶器なんか持ってないでしょうね。」

     女、チェ-ンを取り出し、バンバン叩きつけながら迫る。

勇気♂「ほら、やっぱりそんな物持ってる・・・」

  女「これはファッション!
    でも君がまじめに考えないんだったら、しばいたろうか?」

勇気♂「(後じさりしながら)あ、ロ-プ、ロ-プです。」

  女「こっちは真剣なんだからね。」

勇気♂「わかりました。
    よく考えてみます。」

     勇気♂しばらく首を傾けて考えているが、手を打って

勇気♂「今度こそ、わかりました。」

  女「わかった?(嬉しそう)
    言ってみて。」

勇気♂「はい。
    あの、売れないダンサ-。」

     照明が変わり、ダンスミュ-ジックが流れると 女ダンス(武富士ダンスとか)を踊り始める。(ビシッと決めてお客さんから拍手を貰うこと)
     照明、音、元に戻る。

  女「どうして、こうなるの!」

勇気♂「結構イケてますよ。
    誰もいない秋の海辺で踊って、ヤブ蚊に刺されまくっているダンサ-。
    確かそんなコマ-シャルなかったですっけ?」

  女「ない!(ダンスの後で息が荒い)
    もう、息が切れちゃったじゃない。」

勇気♂「基礎練不足なんじゃないですか。」

  女「仕方ないわね。
    ヒントでもあげようか。」

勇気♂「はあ、お願いします。」

  女「じゃあ、そこのダンボ-ルを抱えてみて。」

勇気♂「え-。
    何か汚いなあ。」

  女「(厳しい口調で)いいから早く。」

勇気♂「こ、こうですか。」

  女「よし。
    それじゃ、それを向こうに運んで来て。」

勇気♂「結構・・・
    重いですね。」

     勇気♂、ダンボ-ルを下手袖まで運ぶと戻って来る。

 女「ありがとう。
    それではヒントを・・・」

勇気♂「ちょっと!
    今のダンボ-ルは何だったんですか。」

  女「いやあ持って来たのはいいけど、どうやって処理しようか困ってたのよ。」

勇気♂「それだけ?」

  女「あ、お礼にあれあげるわ。」

勇気♂「いや、いりませんよ。」

  女「ホ-ムレスになったら役に立つわよ。
    遠慮しない、遠慮しない。」

勇気♂「だからいりませんって。」

  女「どうも話のわからない人ね。」

勇気♂「そりゃあなたです。」

  女「えっ!?」

勇気♂「あなたの話がわけわからないから、さっきから話が全然進まないじゃないですか。」

  女「まあまあ、劇ってこういう所が面白いんだから。」

勇気♂「面白くありませんよ。
    早くヒントを出して下さい。」

  女「はいはい。
    それじゃいくわよ。
    奥様は、と言えば。」

勇気♂「17歳、いや18歳だったかな?」

  女「どっちも違う!・・・
    え-と、そうだ!おじゃ、と言えば。」

勇気♂「おじゃる丸。」

  女「じゃなくって・・・
    おじゃま、ここまで言えばわかるでしょ。」

勇気♂「わかりました!
    おじゃマンガ山田君。」

  女「ちが-う!・・・
    え-と、え-っと、ドレミ。」

勇気♂「ファソラシド。」

  女「そうじゃなくって、その、昔ヨ-ロッパで、罪のない女の人がこれだって言われて火あぶりにされたという・・・」

勇気♂「ああ、あれ!」

  女「そう、それよ!」

勇気♂「マリ-アントワネット。
    いや、ジャンヌダルクったかな。」

  女「君、わざとボケてるでしょ。」

勇気♂「いえ、僕世界史とってないから・・・」

  女「仕方ないわね。
    これでわからなかったら、君日本人じゃない。
    私怒るよ。」

     音楽(おジャ魔女のテ-マとか)が流れ、女その場で踊って決めのポ-ズを取っているが、勇気♂呆れたように向こうへ歩き始めている。

  女「実は私、魔女なんです!・・・
    って、無視すんなよ!」

     女、勇気♂をつかまえて

  女「(息が苦しそう)ああ、しんど。
    ちょっとタイム。」

勇気♂「大丈夫ですか。」

  女「この劇間違ってるわ。
    なんで私だけダンスがあるの。(息が上がる)
    お前も踊れ!」

勇気♂「そんな無茶な・・・
    その程度で情けないですよ。
    ほら、あそこのお客さん。
    大変だなあって見てますけど、同情の目で見られてどうするんですか。」

  女「それでさ・・・(息が荒い)。」

勇気♂「いや、ホント大丈夫ですか。
    早くセリフ言わないと時間オ-バ-しちゃいますよ。」

  女「魔女なの!
    私、魔女なわけ。
    わかった?」

勇気♂「へえ、そうですか。」

 女「信じてないようね、谷口勇気君。」

     勇気♂、少しギクリとした様子。

  女「どうして名前を知ってるのか、って思ってるでしょ。
    心配しなくていいわよ。
    補導員とかじゃないから。」

勇気♂「僕、忙しいんですけど・・・」

  女「お昼からの授業サボってブラブラしてる高校生が、忙しいワケないでしょ。」

     勇気♂、諦めたように下手の小岩に腰掛ける。

勇気♂「一体、何なんですか、オバサン。」

  女「オバサン!?」

     女、激怒して勇気に詰め寄っている。

勇気♂「あ、すみません。
    え-と、オネエサン。」

  女「そうでしょ。
    勇気君、そんなに無神経だから女の子にふられるのよ。」

勇気♂「何言ってるんですか。」

  女「高二の時、塾で隣に座った女の子に勇気君は一目ボレしました。
    彼女の名前は安田瞳さん。」

勇気♂「ちょ、ちょっと。」

  女「あら、恥ずかしがっちゃって、カワイイ!」

勇気♂「そうじゃなくて、何でそんな事・・・」

  女「魔女だから、勇気君の事いろいろ知ってるのよねえ。」

勇気♂「なんか魔女って言うより、噂好きの近所のオバサンみたいな・・・」

  女「(せき払い)」

勇気♂「あ、オネエサンみたいな気がします。」

  女「瞳さんの、タレた目、アヒルのような唇、ちょっと茶色が入って天然パ-マの髪の毛、舌たらずで甘ったれたようなしゃべり方、全てが勇気君のストライクゾ-ンど真ん中でした。」

勇気♂「妙に細かいですね。」

  女「『谷口君、英語のテスト難しかったね。』
    『そうかなあ。何点あった?』
    『え-?』
    『教えてよ。』
    『50点しかなかったんだ。私もうショック・・・』
    『50点!?』
    『悪いでしょ。』
    『いやいや・・・まあ、今度頑張ればいいよ。』
     勇気君は30点でした。」

勇気♂「オネエサン、一体・・・」

  女「私さあ、魔女界では演技派で通ってんのよ。」

勇気♂「安田さんは、そんなバカみたいなしゃべり方じゃありません。」

  女「あら言うじゃない。
    ちょっとオ-バ-にしてるだけよ。」

勇気♂「オ-バ-にしないで下さい。
    ムカつきます。」

  女「しかし何と言っても勇気君が気に入ったのは、彼女が巨乳だった事。
    隣の席からチラチラ見える胸の谷間に勇気君はクラクラッと来たのでした。」

勇気♂「いや、それは・・・」

  女「違うの?」

勇気♂「好きに言って下さい。」

  女「塾が終わった帰り際、生まれて始めて告白しました。
    『安田さん。ぼ、僕と付き合ってくれませんか。』
    彼女はニッコリ笑ってオッケ-してくれました。
    塾の帰りはいつも一緒。
    休みのたびにデ-トもしました。
    毎日こんな気分でした。
    君の瞳は百万ボルト、地上に下りた最後の天使・・・(歌っている)」

勇気♂「あ、あの、お客さんの年齢層間違えてませんか?」

  女「顧問の創作だから少々我慢しなさい。」

勇気♂「そういう問題ですか。」

  女「そして、それは空に三日月の輝く真夏の夜の事でした。
    ド-ン!
    パカッ!
    花火大会を見に行った2人は、ついにド-ン!
    パカッ!
    以下放送禁止です。
    いよっ、この色男!」

     女が背中を叩くが、次第に元気をなくした勇気♂は下を向いている。

  女「しかし、幸せな日々はいつまでも続きませんでした。
    3年になると、彼女が言ったのです。
    『谷口君。私たち受験生だから、大学に合格するまでしばらくこういうお付き合いは控えた方がいいと思うの。』
    それを聞いた勇気君は、動揺し、一番の親友の坪田君に相談したのです。
    坪田君はこう言いました。
    『お前彼女が出来てから成績がガタ落ちじゃないか。彼女はそれを心配してるんだよ。』
    勇気君はハッと気付いて、彼女の言う通り潔く身を引いたのでした。
    ところが、ところが・・・」

勇気♂「もういいです。
    やめて下さい・・・」

  女「そう、彼女は別の男の子と付き合い始めていたのでした。
    しかも相手は、あの坪田君。
    坪田君と瞳さんが仲良く歩いているのを目撃した勇気君は、頭の中で何かがガラガラと音を立てて崩れていくようなショックを覚えていました。」

     女、ゲッソリと落ち込んでいるような勇気をはげますように

  女「それが昨日だったのよね・・・
    まあ、元気出しなさいよ。
    女の子なんか星の数ほどいるんだから。」

勇気♂「あのさあ・・・」

  女「坪田君の弁解するわけじゃないけど、勇気君には言えないわよ、そりゃ。」

勇気♂「横取りするか、普通・・・」

  女「もうわかってるだろうけど、坪田君が横取りしたんじゃないのよ。
    瞳さんの方から、まあ相手を変えたって事で・・・」

勇気♂「そうだろうさ。」

  女「いや、こう言っちゃ何だけど、坪田君いい男だもんね。」

勇気♂「ああ。
    背が高くて恰好もいいし、勉強も出来るし、スポ-ツも得意だ。
    それに何より、僕より性格がいい・・・」

  女「そりゃ私でも君よりは坪田君の方が・・・」

勇気♂「あなた、僕にけんかでも売ってるんですか?」

  女「あら、ごめんなさい。
    客観的事実を言っただけよ。」

勇気♂「だから、なおさら腹が立つんじゃないですか。」

  女「ところで、これで信じてもらえました?
    私が魔女だって事。」

勇気♂「わかったよ。
    坪田が僕を裏切ったんだ。
    もう何が起こってもおかしくない気がする。」

  女「ねえねえ、私いくつだと思う?(ポ-ズを取る)」

勇気♂「魔女の年ですか?
    え-と、ハタチくらいかな・・・」

  女「さっきオバサンって言ったくせに・・・
    ふうん、やっぱり人間の30代に見えるんだ、私って。」

勇気♂「僕何も言ってないですよ。」

  女「実は少しだけ心が読めるのよね、魔女だから。
    で、ビックリしないでね、私今年で三千七百七十六歳なの。」

勇気♂「数字がインチキくさいな・・・」

  女「どうして?」

勇気♂「だって、それ富士山の高さでしょう。
    富士山のようにミナナロウって覚えましたよ。」

  女「疑ってるな?」

勇気♂「そりゃそうです。」

  女「そんなに疑うんだったら、もう少し勇気君の事、バラしちゃうわよ。」

勇気♂「オバ、じゃなかったオネエサン。
    異常に派手な探偵か、もしかしてドッキリカメラですか?」

  女「だから魔女だと言ってるでしょ。」

勇気♂「だったらホウキで空でも飛んで見せて下さい。」

  女「ああ、あれは同じ魔女でも位の低い魔女なのよ。
    ほら宅急便のバイトしたりしてるでしょ。
    パ-トみたいなもんね。」

勇気♂「パ、パ-トですか?」

  女「そうよ。
    私は本雇いだからね。
    この制服もちゃんと支給してもらってるし。」

勇気♂「それが制服なんですか。」

  女「三千歳過ぎたら辛いものがあるけどね。」

勇気♂「ふだんはどうやって生活を?」

  女「そりゃ5時まで働いて、ス-パ-で買い物して・・・」

勇気♂「そこらのオ、オネエサンと変わりませんね。」

  女「それから帰って、炊事、洗濯・・・
    ダンナがボンクラで役立たずだから大変なのよ。」

勇気♂「もしかして、子供もいるとか。」

  女「そうなのよ。
    これが高三と中三で、同時に受験なんでお金がいくらあっても足りゃしないわ。」

勇気♂「本当ですか?」

  女「嘘に決まってるでしょ。」

勇気♂「な、何で嘘つくんですか!」

  女「あんまり浮世離れしてると勇気君に怪しまれるかなって。」

勇気♂「十分怪しいですよ。」

  女「あらそう?」

勇気♂「見るからに普通じゃないです。」

  女「そっかあ・・・
    でも、魔女だって事はわかったでしょ。」

勇気♂「いえ、ますます信じられなくなりました。」

  女「ひっど-い・・・
    信じてくれなきゃ、私泣いちゃうから!(泣いている)」

勇気♂「やめて下さい。
    変に思われるじゃないですか。」

  女「嘘泣き-。」

勇気♂「もうあなたの言う事は信じません。(去ろうとする)」

  女「待ってよ、お兄さん。
    サ-ビスするからさあ。」

     勇気♂振り返る。

  女「若い子もいっぱいいるわよ。
    もうピチピチの、巨乳ぞろい・・・」

     勇気♂呆れた様子。

  女「冗談よ。
    冗談だってば。」

勇気♂「失礼します。」

  女「魔女を怒らせると怖いわよ。」

     女、下から何か拾いぶつぶつ呪文を唱えて勇気の頭めがけて投げる。

勇気♂「あ痛っ!」

  女「ふっふっふ。
    魔女の呪いよ。」

勇気♂「石投げたんじゃないですか。」

  女「私は何もしていない。
    ただ頭が痛くなる呪文を唱えたのだ。」

勇気♂「あのねえ・・・」

  女「次は死に至る呪文を唱えるぞ。」

勇気♂「わかったから危ない事しないで下さい、まったく。」

  女「私は人の生命を司る魔女。
    命が惜しかったら、私の話をよく聞くことね。」

勇気♂「もう少し説得力のある説明は出来ないんですか。」

 女「勇気君が学校をサボってここに来たのはなぜ?」

勇気♂「知らないよ・・・」

  女「今日帰って来た模擬試験の結果がショックだったんでしょ。」

勇気♂「そ、その程度で学校サボったりするもんか。」

  女「いいえ、大ショックだったのよね。
    瞳さんとの交際を諦めた勇気君は、その分一生懸命勉強しようと決心しました。
    『大学に合格したら、又お付き合いしましょう。』
    その言葉を真に受けて・・・
    ああ、かわいそうな勇気君。
    合掌。」

勇気♂「合掌なんかしないで下さい。
    縁起が悪い。」

  女「しかし、瞳さんに夢中でいつの間にか落ちていた勇気君の学力は簡単には上がりませんでした。
    あせりと、自分自身の能力に対する疑いが頭をかすめます。
    夏休み、勇気君は自分でもビックリするくらい勉強に打ち込みました。
    あまりにも勉強し過ぎて鼻血を大量に出し、それが口に詰まって倒れて、お母さんが心配した程でした。そして夏休みが明けて1回目の模擬試験。その結果が今日帰って来たのでした。」

勇気♂「だから言ったでしょう。
    模試が悪いなんて、みんな悩んでる事なんだから・・・」

  女「半分見栄で書いてみた東大はもちろん、本命の国公立大学の判定は全てE。
    志望校の見直しが必要、と書いてありました。」

勇気♂「うるさい。」

  女「行くつもりがなくて、書いた事のなかった私立大学も書けるだけ書いてみました。
    この程度なら滑り止めというつもりで書いた所も、全て結果はE判定。
    しかし、2つだけEでない判定がありました。
    それは『志望校欄は全て埋めろ』と強制する担任の先生に対する反発と冗談で書いた、2人のお姉さんが通っている女子大と女子短大でした・・」

勇気♂「ははは。
    ははははは。」

  女「今勇気君は、自分自身のおろかさに腹を立てています。
    冗談のつもりが冗談にならない自分に・・・」

勇気♂「もういいでしょう。
    僕、学校に帰ります。」

  女「もう終わってるわよ。」

勇気♂「じゃあ塾に。」

  女「行く気ないくせに。
    瞳さんと坪田君、同じクラスなんでしょう?」

勇気♂「魔女だか何だか知らないけど、もう用はないよ。」

  女「私の方があるのよ。
    待って、そっちは反対の方向でしょ。」

     勇気♂が下手に歩いて行き、女は慌てて後を追い一緒に退場。
     上手から小学生高学年くらいの女の子(勇気♀)が、母親の手を引っ張って登場。

勇気♀「ママ、早くう。」

  母「勇気、ここはもう寒いわよ。」

     勇気♀、母の手を離して小走りになるが、母が、きつく叱る。

  母「勇気!
    走っちゃ駄目!」

     勇気♀走るのをやめ、しゃがみ込むと手で砂をいじり始める。

勇気♀「わあい。
    お砂がいっぱい・・・」

  母「しょうがないわね。
    どうしてもここがいいの?」

勇気♀「うん。
    だって勇気、海が大好きなんだもん。」

  母「もう寒いから誰もいないじゃない。」

勇気♀「平気よ。
    勇気、今日もここで遊ぶ。」

  母「ママはお買い物に行ってすぐ戻って来ますからね。
    ここで遊んでるんですよ。」

勇気♀「うん。」

  母「何かあったらママの携帯に電話しなさい。」

勇気♀「わかった。」

     母が上手に去るのと入れ違いに勇気♂と女が入って来る。
     入ってすぐの所で立ち話

  女「話、わかった?」

勇気♂「ちょっと整理させて下さい。
    つまり、僕の命と、その女の子のとが、逆になりそうだと・・・」

  女「そうなの。
    だから、勇気君このままじゃかわいそうかな、と・・・」

勇気♂「さっきはそう言ってませんでしたよ。
    自分のミスが閻魔大王にバレると困るって。」

  女「結果的には勇気君が助かるわけだから。」

勇気♂「まったく、そんな大事な事間違わないで下さいよ。」

  女「紛らわしいのよ。
    どっちも谷口勇気で漢字まで同じなんて。」

勇気♂「僕は高校生の男。
    その子は小学生の女の子なんでしょ。」

  女「パソコンに入力するのに1行違いだから、つい間違えちゃって。」

勇気♂「パソコン?」

  女「そうなのよ!
    魔女界もIT革命でさ、昔みたいに人の命ロウソクが尽きたら終わり、なんて時代じゃないのよね。」

勇気♂「それは初耳です。」

  女「毎日毎日、人の余命をパソコンで入力するってのも、しんどいものがあるのよ。
    だから余命1年もないその子とあなた、1行ずれて間違えちゃったわけ。」

勇気♂「そんなので殺されちゃ、しゃれになりませんよ。」

  女「三千歳過ぎると、新しい機械に慣れるのも大変なのよね。」

勇気♂「変な言い訳しないで下さい。」

  女「まあとにかく、下手すると君1週間後には自殺する事になるんだから・・・」

勇気♂「で、それを防ぐために、その子を説得しろと。」

  女「ほら、あの子よ。
    お母さんが買い物に行ってる間に、声掛けて来て。」

勇気♂「いや、でも・・・」

  女「今日の所は知り合いになるだけでいいから。
    さあ、早く。」

     尻ごみしている勇気♂を、女押すようにして勇気♀の所へやる。
     女は小岩に座る。

勇気♂「こ、こんにちは。」

勇気♀「こんにちは。(ニッコリ笑う)」

     勇気♂、オドオドと女の所に戻って来る。

  女「何やってるのよ。」

勇気♂「いやあ、すごくかわいい子なんで・・・
    ちょっとドキっと。」

  女「あのねえ、相手は小学生よ。」

勇気♂「僕が大学卒業して社会人になる頃には高校生か・・・
    十分射程距離だ。」

  女「何言ってるの。
    1年後には確実にどちらかは死んでるんだから。」

勇気♂「とても信じられません。」

  女「わかった。」

     女、その場を去るフリ

  女「勇気君が本気にしないんだったら、もういい。
    閻魔様に怒られるくらい、どうって事ないし。」

勇気♂「僕が自殺するなんて、思えないんですよ。」

  女「だから、もういいって。
    助かる確率の方が高いんだし。」

勇気♂「待って下さい。
    やりますよ。
    まずあの子と友達になればいいんでしょう?」

  女「早くしなきゃお母さんが戻って来るわよ。」

     勇気♂、勇気♀の所に再び行く。

勇気♂「こんにちは。」

勇気♀「さっき言ったよ。」

勇気♂「あ、そうだね。」

     気まずい間

勇気♂「ね、ねえ、お名前は?」

勇気♀「谷口勇気。」

勇気♂「ホント?
    凄い偶然だね。
    お兄ちゃんも、谷口勇気って言うんだよ。」

勇気♀「お兄ちゃんって、悪い人?」

勇気♂「え?
    どうして?」

勇気♀「ママが言ってた。
    知らない人と話してはいけません。
    なれなれしく話して来る人は悪い人だからって。」

勇気♂「お兄ちゃんは悪い人じゃないよ。」

勇気♀「でもママが・・・」

     勇気♂、勇気♀の気を引こうと思って、面白い顔をしたり動きを見せたりする。
     不思議そうに見ていた勇気♀笑い出す。

勇気♂「ほうら、お兄ちゃんは悪い人じゃないだろう?」

勇気♀「悪い人じゃないけど、バカな人みたい。」

勇気♂「バ、バカ?・・・」

勇気♀「もっと面白い事やって。」

勇気♂「しょうがないなあ。(バカなフリ)」

勇気♀「キャハハハハ。」

勇気♂「(ボソリと)情けないなあ・・・」

勇気♀「ねえ、お兄ちゃん。
    一緒に作って。」

勇気♂「え、何を?」

勇気♀「お砂でお城作ってるの。」

勇気♂「そうか。
    じゃあ、お兄ちゃんも手伝ってあげるよ。」

勇気♀「ありがとう。」

勇気♂「あのう、勇気ちゃん。」

勇気♀「なあに?」

勇気♂「ここさあ、波が来て崩れちゃうから、もっと向こうで作ろうよ。」

勇気♀「ううん。
    ここがいいの。
    だって波まだあそこだよ。」

勇気♂「いや、だから潮が満ちて来るから・・・
    ま、いいか。」

勇気♀「ねえ、早く手伝ってよ。」

     2人で砂の城を作っている。

勇気♀「うわあ、すごく大きいのが出来た。」

勇気♂「そうだね・・・
    だけど、そろそろ波が・・・」

     波の音。
     勇気♂、迫って来る波から城を守ろうとしているが

勇気♀「あっ!」

勇気♂「やっぱり駄目だ・・・」

勇気♀「勇気のお城、崩れちゃった・・・(シクシク泣き始める)」

勇気♂「困ったなあ・・・
    ねえ勇気ちゃん、泣かないで。
    又作ってあげるから。」

勇気♀「ホント?」

勇気♂「ああ、今度はもっと大きくて立派で、崩れたりしないのを。」

勇気♀「やったあ!
    約束してくれる?」

勇気♂「もちろんだよ。
    そうだ、もっと向こうに作れば、波が来ないから大丈夫だよ。」

勇気♀「嫌。
    勇気、このお岩の所が好きなの。」

勇気♂「でもなあ。」

勇気♀「お兄ちゃんが、崩れないお城作ってくれるって、言ったもん。」

     上手から母が戻って来る。

  母「勇気ちゃ-ん。」

勇気♀「あ、ママだ。」

     勇気♀、立ち上がって母の所に行く。
     母、勇気♂の方を不審そうに見ている。

勇気♂「あ、あの、こんにちは。」

勇気♀「ママ。
    このお兄ちゃんが遊んでくれたんだ。」

  母「そうですか・・・
    じゃ、お兄ちゃんにバイバイって。」

勇気♀「バイバ-イ。」

     勇気♀は手を振っているが、母は軽く頭を下げると、勇気♀の手を引っ張って去る。
フリーエリア
プロフィール
HN:
ゴルゴ40
年齢:
60
性別:
男性
誕生日:
1963/12/06
職業:
高校英語教員
趣味:
脚本創作・詰将棋・競馬・酒・女・仕事
自己紹介:
 ここには高校演劇用の少人数で1時間以内、暗転のほとんどない脚本を中心に置いてあります。

 上演を希望される方は脚本使用許可願を使って連絡してください。無断上演は厳禁です。
フリーエリア
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア